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2018/05/19 土曜 Going My Way を観る
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 BBCの『タイタス・アンドロニカス』を観てだいぶ気分が落ち込んだ.中和しようという訳でもないが,同時に『我が道を往く(Going My Way)』という映画のDVDも借りてきたので,その『我が道』を観てみた.
 ビング・クロスビー主演で1944年の作品である.アカデミー賞を多数受賞したので,たぶん歴史的な名画という位置づけだろう.昔だと,淀川長治が出てきて「いいですねぇ」というような映画であろう,と受け止めた.私は観たことはない.

 DVDのケースには,老牧師と赴任してきた若い牧師の物語であると書いてある.が,観てみると牧師ではなく神父なのである.ケースの記載は基本的なところが間違っている.
 だがこの間違いは仕方ないかな,という気もする.アメリカで聖職者といえば,そりゃ,牧師が基本だろう,と人は自動的に判断すると思えるからである.が,実はカトリックで神父であった.その点は,この映画の重要なポイントであったろう.
 以前の私の知識では,米国の宗教人口をみると,カトリックは最大宗派である.プロテスタントは細かく分かれていて,合計すると多数派であるが個々には小さい.以前,あるアメリカ人に,なのになんでカトリックがマイノリティなのさ,と質問したことがある.プロテスタントは,違ってはいるけれど,そんなに違わない,ということだった.
 単にカトリックというだけではない.観ながら気づいたことは,この映画は基本的にアイルランド系(Irish)の世界を描いているのではないか,という点である.主人公はオマリー神父であるが,オマリーというFamily NameはIrishに多いように思う.老神父の方は,90歳の母親がアイルランドにいるという設定だから,若い頃にアイルランドから米国に渡った,ということだろう.善人の警官の名前がマッカーシーで,教会にしばらく来ていないという設定なので,たぶん,やはりアイリッシュのカトリックだろう.
 念のため,ビング・クロスビーの経歴を調べてみた.父親はイギリス系であるが,母親がアイルランド系らしい.生まれたのは西海岸ワシントン州のタコマという.おいおい,タコマかよ,と思った.タコマはちらと行ったことがある.シアトルから州都のオリンピアに行く間にある港町であり,日系人も多かった.で,中退したけれど大学は,ワシントン州の東端のスポケーンにあるゴンザガ大学(Gonzaga U.)という,イエスズ会系の大学である.後にこの大学に寄付もしているという.だから,ビング・クロスビー自身が,アイリッシュが入っていて,カトリックなのだろう.
 アイリッシュの移民は,伝統的に,母国が飢饉になって食えずに米国に来ることが多かった.白人ではあるが,長く偏見とステレオタイプの対象であり,差別もされたのである.老神父は,母親が90歳というから,たぶん70歳.聖ドミニコ教会を設立し,45年間その教会で頑張ったという設定である.すると最初の頃は25歳くらい.この映画が1944年の作とすると,20世紀への変わり目の辺り,つまり米国への移民が一番多かった時期に,たぶん多くのアイリッシュとともにアメリカにやってきて,ニューヨークのアイリッシュが多い,基本的に貧しい地区で頑張ってきた,ということなんだろう.
 この映画は,そういう世界の人情劇である.それほど悲劇的な,あるいは派手な展開はない.落語の人情話とか,『こち亀』に時折出ていた人情話.そういう話であると思えばよいように思う.実際,最後の場面では涙を誘われた.
 もう一つ感じたのは,私にはカッコ良いとは思えなかったビング・クロスビーに,ヘンリー・フォンダとか,グレゴリー・ペックのようなダンディズムがあることである.古き良き時代なのだ.
 まあ,面倒なことはいわず,こういうシンプルな映画もいいですよね.

by larghetto7 | 2018-05-19 14:59 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/17 木曜 シェイクスピア『タイタス・アンドロニカス』
 BBC制作のシェイクスピア戯曲DVDをまた県立図書館から借りてきた.以前だと史劇4部作などを観ていたのでまとめて借りていたが,セットの作品は観終わったので1つだけを借りてきた.『タイタス・アンドロニカス』である.自慢にはならないが,こういう作品があること自体,私は知らなかった.あらすじもむろん知らない.
 その『タイタス・アンドロニカス』を観てみた.が,この作品を観ることを私は人には勧めない.DVDで2時間47分の作品であるが,私は1時間ほど観たところで観るのを止めた.あまりに残酷でむごたらしいからである.少し時間を置いてから続きを観た.正直,しばらくの間,気分が落ち込んだ.
 ストーリーは,ネットで検索すればすぐに出て来る.だから書かない.
 この作品は,シェイクスピアの初期の作品であり,悲劇に属する.復讐悲劇と言うべきか.知名度は低いだろう.ただネットで検索すると,日本でも劇場で上演されており,海外ではアンソニー・ホプキンス主演で映画にもなっている.さすがにシェイクスピアの作品であるから,取り上げられる機会はあるようだ.
 主演のトレヴァー・ピーコックは,このDVDシリーズの常連俳優である.私が観た中でも,『ヘンリー六世』でイングランドの猛将トールボットや,反乱の首謀者ジャック・ケイドを演じていた.適役といえる.最後は殺される皇帝のサターナイナスをやっていたのは,やはり『ヘンリー六世』でエドワード4世(およびその他)などを演じていた,ミュージシャンでもあるブライアン・プロザーロー(Brian Protheroe)である.何となくエドワード四世のノリで皇帝を演じていたような気がする.
 私には判定できないが,演技は立派だったように思う.
 にもかかわらず,こういうむごたらしい劇を喜んで観る人がいるなら,ほとんど変質者ではないか,と思えてならない.
 この劇の時代背景が実際のある時代に設定しているのか,その点は分からない.不思議に思ったのは,主役のタイタス(基本は軍人)は劇の冒頭で皇帝になる機会があり(だがサターナイナスを推挙する),そのサターナイナスを殺して皇帝になるのは,タイタスの長男なのである.確かに一時期,軍人皇帝時代というのが,ローマにはあった.その時代を過ぎると専制君主の時代に入る.イメージしていたのはその頃かな,と思うが,ネットにも解説は出て来ない.

by larghetto7 | 2018-05-17 22:52 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/14 月曜 スーパーグローバルのGP
スーパーグローバルのGP

by larghetto7 | 2018-05-14 15:36 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/13 日曜 DVDで『怪人マブゼ博士』を観る
 例によって県立図書館にいったとき,他に借りたいDVDがなくてこの作品を借りてきた.実は返却期限内には観なかったが,再度借りてやっと観た.
 1932年制作のドイツ映画である.時期的に映画の『三文オペラ』(たぶん最初の映画化)が作られた頃である.
 原題を直訳すると『マブゼ博士の遺書』である.犯罪者のマブゼ博士の映画がこの作品の前に2つあり,この映画はその後の話,ということだそうだ.年老いたマブゼ博士が発狂して精神病院に入っている.しかし何やらモノを書き始め,それが次第に訳の分かった犯罪計画になって行く.精神病院の院長であるバウム教授がこのマブゼ博士を研究していたが,次第に取りつかれ,犯罪組織を作ってその犯罪計画を実行に移してゆく.マブゼ博士は病院内で死亡するが,バウム教授の犯罪は止まらない.その犯罪をローマン警部が追う.最後はローマン警部に追い詰められたバウム教授がマブゼと同化し,発狂してしまう,という話である.
 この映画,DVDのケースには「ナチ時代ドイツの黙示録」と書いてあり,確かにナチが政権を取ると上映禁止になる.中身も,バウム教授が作る犯罪組織がナチと似ているといえば似ているかも知れない.しかし秘密の犯罪組織であるから,組織はこんなもののように思う.上映禁止になったのは,単に,監督のフリッツ・ラングにユダヤ系の血が入っているからではないか,と勝手に想像してしまう.
 ある意味歴史的な映画であるから,観て勉強になった,というべきだろう.
 映像は美しい.冒頭の偽札印刷工場の場面からして,映像の凝り方に驚く.建物の様子も洒落ている.当時のドイツの文化水準の高さを示すのだろう.
 登場人物の顔面表情がよくできている.というか,昔の心理学の顔面表情のサンプルを見るようである.無声映画時代の伝統なのだろう.
 登場人物はステレオタイプというか,役割スキーマ通りの姿で描かれている.博士,教授,警部,狂人,犯罪者,可愛い女性の恋人,などである.何となく,人物の姿が半世紀以上前に読んでいた漫画の「鉄腕アトム」に出てきそうな描き方だな,と感じた.
 アメリカ映画ほど暴力的ではない.登場する拳銃も口径が小さく自動式である.アメリカならデカくて回転式だろう.ちなみに,マルコムXは,映画でも実際も,ショットガンで撃たれた上に2丁の拳銃で連射されている.
 基本的に気持ち悪い面があり,この映画に出て来るマブゼ博士も,ノスフェラトゥの並びかな,と感じる.
 マブゼ(Mabuse)の読みは,真ん中にアクセントがあるので,マブーゼと聞こえる.DVDに英語版の解説があり,そこではマブーサという発音に近いと感じた

by larghetto7 | 2018-05-13 11:23 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/10 木曜 DVDで『マルコムX』を観る
 市立図書館で『マルコムX』という映画のDVDを借りてきて,観た.
 いつもは,現住所の市にある県立図書館でDVDを借りるのであるが,たまに市立図書館に行ってみた.DVDとなると,県立図書館にもあまりないけれど,市立図書館にもない.市立図書館の棚に並んだDVDを眺めたが,観たいと思えるものがあまりない.しょーがねぇなぁ,と思っていたら『マルコムX』という題名が目に入った.マルコムXが映画になっていたとは知らなかった.1992年制作で,主演がデンゼル・ワシントンだという.借りてきたのである.

 マルコムXは,私が学生の頃の反体制のアイコンの一人である.当時だと,中身は違うが,チェ・ゲバラの並びかなぁと思う.アメリカの黒人公民権活動家,という括りになると思うが,キング牧師などに比べると急進派である.
 ただ,私の印象では,アメリカの人種問題で活躍した人は,あまり日本では取り上げられていなかったように思う.異論がある人もおられようが,日本には深刻な人種・民族問題がないからだろう.むしろ,アメリカの公民権運動は,その後に反戦運動になってきたところがあり,反戦運動経由でマルコムXも日本に知られるようになったかも知れない.マルコムXは反戦運動はしていないと思うし,反戦運動が盛り上がる頃には既に彼は暗殺されていた.けれど,マルコムXの影響はその死後も強く,人種問題と同じような思想の流れで反戦運動が盛り上がったように思う.
 マルコムXはブラック・モスリムに属する.ボクシングのカシアス・クレイが突如としてモハメッド・アリと称するようになり,子供の頃に私は不思議に思ったものである.アリはマルコムXと親交があり,その影響でモスリムになったという.

 社会運動を背景とした映画だから臭い映画かも知れないと思ったけれど,画面は美しく,商業映画として通用する面白さがある.ストーリーは自伝に基づくが,一部映画用に創作が入っているという.波乱の39年の生涯だった.映画を観るべきなのであらすじは書かない.
 映画に出て来るのは現実であるが,しかし黒人差別はすさまじい.父親は白人に殺されるが警察から自殺にされる.母親は白人にレイプされて生まれたという.KKK団がやってきて窓ガラスを全部割って嫌がらせしたり,家に放火したり,その上親父が殺されるのである.場所はネブラスカにオマハというので,埼大の学生も留学に行くかも知れない所ではないか.
 監督のスパイク・リーが,マルコムの悪仲間の役で出て愛嬌を振りまくのも面白い.
 長生きしていれば晩節を汚したかも知れないが,マルコムXは早死にすることで星になった.そこはゲバラと同じだろう.
 映画の最後のところでネルソン・マンデラがちょいと出てきてマルコムXを讃える.

by larghetto7 | 2018-05-10 21:02 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/08 火曜 シェイクスピア『夏の夜の夢』
 BBC制作のシェイクスピア戯曲のシリーズDVDで『夏の夜の夢』を観た.やはり県立図書館から借りてきたDVDである.
 DVDのボックスには題名を『夏の夜の夢』と表示している.私は『真夏の夜の夢』と覚えていた.ネットで調べてみた.原題は A Midsummer Night's Dream であるから『真夏』でよいように思える.が,時期はそれほど暑くない時期とかで,現在では『夏の夜の夢』が優勢だそうである.私が『真夏』で理解していたのは,メンデルスゾーンの劇付随音楽の方に触れることが多かったからだろう.音楽の方はまだ『真夏』が残っているとのことだった.
 妖精が魔法をかけて恋の行き違いが生じるが,最後は円満に終わるというハッピィエンドのストーリーである.安心して楽しく観られる劇である.それなりに面白かった.妖精の王妃役でヘレン・ミレンが出ている.ヘレン・ミレンは現在72歳で,割と最近の映画でも美人である.このDVD作品が撮影されたのは35歳くらいのはずだからどんな具合かと興味があった.まあ,そんなに若々しくはないけれど,やはり美人であった.
 劇中の社会は階級社会である.主要な登場人物は高貴な人たちであり,恋人たちもその階級に属する.その高貴な人たちの前で庶民(職人)が劇中劇を演じる.妖精も階級社会であり,王と王妃が道化や使用人を使役する.この構造は『テンペスト』も同じである.劇中劇はシェイクスピアの超有名な作品を混ぜたような中身であり,そこもご愛敬なのだろう.
 『テンペスト』同様に妖精が活躍する.キリスト教社会で妖精という異教的な要素が許されるのか,という気もする.が,そこはイギリスの演劇ルネサンス期である所以だろう.逆にいえば,後の清教徒革命期に劇場が閉鎖させられたのも分かる気がする.『テンペスト』はイタリア(の,たぶん近海)に舞台を設定するが,この『真夏』はアテネである.登場人物中で最も偉いのはアテネ公であるが,この人はギリシャ神話のアテネ王に相当するらしく,そのアテネ王が,やはりギリシャ神話にあるアマゾン国の女王と結婚する,というのが物語の背景にある.だからそもそも,古代ギリシャの話にしてもよかったのだろう.
 ヘレン・ミレン目当てに観たのだけれど,むしろ妖精の王を演じたPeter McEneryと妖精パックを演じたPhil Danielsのイケメンぶりが印象に残った.

by larghetto7 | 2018-05-08 18:53 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/03 木曜 タカちゃん死去
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 昨日,家の室内で飼っていたオス猫のタカちゃんが死去した.
 動物病院の記録では,タカちゃんは2004年生まれである.ただ,元来は野良猫であり,成猫になってから捕獲した猫なので,正確な生まれは分からない.あくまで推定である.推定では14歳で死去したことになる.
 タカちゃんは,たとえて言えば『のたり松太郎』の田中君のような感じの猫だった.表情の多い猫の中にあって無表情で他と一緒にいるのである.
 タカちゃんには手を焼いたという記憶が全くない.暴れたとか,大小便をトイレ以外でしたとか,他の猫の食糧を取ってしまう,といったことは記憶にない.おとなしい猫,いつもみんなと一緒にいる猫だったのである.
 一時は「子犬のタカちゃん」といっていたように思う.毛の色がクリームで,尻尾をよく立てていたので,その姿が柴犬のように見えたのである.

 この猫を捕獲した経緯は覚えていない.おそらく,他の猫を捕獲して家に入れたとき,いつも一緒にいたから捕獲したのだと思う.他の猫とは,小白(コシロ)やパンダ,シャチ君などである.捕獲した直後に去勢手術をするために動物病院に連れて行った.動物病院にかかるには名前をつけないといけない.特に特徴はないので,名前のつけように困った.動物病院の先生が「では,タカちゃんにしよう」といって,タカちゃんで決まった.私がタカギだからだろう.
 タカちゃんは病気をすることはずっとなかった.しかし昨年(2017年)の5月30日(火曜)に,食べなくなったので,動物病院に連れて行ったのである.検査の結果,腎臓が悪いと分かった.ある意味,猫の定番の病気である.それ以来,毎週,タカちゃんを動物病院に連れて行くようになった.連れてゆく曜日はなぜか水曜で定着した.そして毎日,朝晩の2回,家で投薬と強制給餌をするのが私の日課になった.
 今年の2月末から,強制給餌をしないでも食べると分かったので,強制給餌を止めた.食事は食べるに任せたが,投薬は続け,水曜には病院に連れて行って注射や点滴をしていた.その後,調子も良いようなので,動物病院通いは2週に1回でよいことになったのである.
 しかし,4月15日からタカちゃんは再び食べなくなった.その時は強制給餌を復活した.しかし病院に連れて行った18日までにはまた食べるようになったのである.
 その後,連休に入った4月29日からまた食べなくなった.強制給餌をまた復活したけれど,どうも具合が悪い.そこで5月1日に病院に連れてゆくと,体温が低いと分かった.獣医さんは,すぐに死んでも不思議はないくらいだという.入院させた.タカちゃんが亡くなったのはその次の日の11時頃である.
 腎臓が悪くなるのは猫の定番であり,そういう猫を私はずいぶんと見てきた.通常は,猫は徐々に弱って行くものである.タカちゃんの場合は急に亡くなってしまったように感じる.
 昨年の5月30日に腎臓の件で最初に病院に連れて行ったときのタカちゃんの体重は,私の日記では3.38Kgである.亡くなる前日の体重が3.4Kgであるから,この1年間,体重は変わらなかった.だからこんなに早くなくなるとは思わなかった.
 しかし,徐々に弱って行く猫の様子を見るのも,つらいものがある.早く亡くなったのは残念であるが,長く苦しむことがなかったのは幸いだったかも知れない.
 愛すべき猫だった.冥福を祈りたい.

by larghetto7 | 2018-05-03 14:20 | 日記風 | Comments(0)
2018/05/01 火曜  大学歌
大学歌

by larghetto7 | 2018-05-01 22:18 | 日記風 | Comments(0)
2018/04/28 土曜 『第三の男』を観る
 県立図書館から借りてきたDVDで『第三の男』を観た.この映画を私が最初に観たのは,中学生か高校生の頃のテレビであろうと思う.街中で人影が大きくなる場面や下水道の場面を記憶していた.が,筋は忘れていた.その当時は結構,テレビで昼間に映画を流していることがあった.今でも覚えているのは(といっても記憶であるから実は不確かである),モニカ・ヴィッティとアラン・ドロンが出た『太陽は独りぼっち(この邦題は安っぽいけれど)』といった結構な名作を,昼間のテレビで観ていたことである.
 昔,鉄人28号のようなアクション漫画で下水道が場面になることがあった(ような気がする)が,この『第三の男』の影響ではないかと思う.これまたどうでもよいことであるが,つげ義春の漫画で人影が大きくなるコマがある.やはり『第三の男』のパクリでは,と感じている.
 その後,何年か前に,あらためて『第三の男』をDVDか何かで観た.そのときにあらすじは確認した.
 今回また観ようと思った理由はくだらない.県立図書館には映画のDVDがあまりなく,選択肢が少なかったから選んだのである.県立図書館よりは,教養学部の資料センターの方が映画のDVDは揃っているだろう.
 あらためて観て中身は同じはずであるけれど,覚えている場面の作りがやや違うと感じるのは,人間の記憶が事後的に再構成されてしまうことによるだろう.
 この映画に使われるアントン・カラスのチターの曲に,Cafe Mozart Waltzというのがある.Cafe Mozartとは,映画の最初の方で出て来るカフェであろうと思ったけれど,ほんとにそうか,確かめたい気分があった.映画では「ここがCafe Mozartです」とはいっていない.しかし作家のホリーが電話で,「Mozart Cafeで会おう」と言われて,カフェで何とか男爵と会う.だからあのカフェがCafe Mozartでよいのだと思う.ただ,映画ではMozart Cafeと言っていた.ネットで調べるとCafe Mozartが正しいようである.
 『第三の男』を観たせいか,Apple Musicでアントン・カラスのチター音楽を探し,何度もかけて聴いた.娘によれば,ディズニー・シーではそんな音楽がよくかかっているのだという.

by larghetto7 | 2018-04-28 22:13 | 日記風 | Comments(0)
2018/04/23 月曜 シェイクスピア『リチャード三世』
 BBC制作のDVDで,『ヘンリー六世』の三部作の後に,4部作の最後の作品である『リチャード三世』を観た.
 BBCのシリーズのシェイクスピア史劇10作の中で,この『リチャード三世』は最も時間が長い.4時間とちょっとであり,1枚のDVDでは収まらず2枚組になっている.
 ストーリーはリチャード三世による王位簒奪劇である.ヨーク朝のエドワード四世の死後,弟のリチャードが王位に就く.王となるために,リチャードはエドワード四世の2人の王子をはじめ,次兄のクラレンス公や妻などを次々と殺してゆく.しかしランカスター家のヘンリー・チューダーが兵をあげ,ボズワースの戦いでリチャードは敗死し,ヘンリー・チューダーがヘンリー七世として即位し,エリザベス一世に続くチューダー朝を開く,という話である.リチャード三世の王位は2年ほどであった.2年であっても行政上の功績は大きいらしい.
 リチャードの特徴は生まれながらの不具ないし奇形にある.劇では,猫背で背にコブがあり,足の長さが不揃いでびっこをひき,片方の手が萎えている,と描写される.生まれたときからの出来損ない,ヒキガエル,化け物,と劇中では何度も罵倒されるのである.身体も醜ければ精神も醜く,多くの人を陥れて目的を達しようとする.

 数年前,そのリチャードの遺骨が見つかったとして話題になった.確かに脊椎に彎曲があった.ただ,それ以外の障害は確認できず,その彎曲も服を着れば目立たない程度であるという.頭蓋骨から顔を復元すると結構なイケメンであり,DNA鑑定から,目は青で金髪である確率が高いという.シェイクスピアが描くほどには醜かった訳ではないだろう,という反論が出る所以である.
 遺骨の発見と並行して(その前からか?),リチャード三世は,シェイクスピアが言うほど悪いことをした訳ではないのではないの? という意見出てきたらしい.シェイクスピアでは実に多くの人を陥れて殺しているけれど,確証はほとんどないはずである.
 よく指摘されるのは,この作品をシェイクスピアが書いた時代はエリザベス一世のチューダー朝である,だからその祖であるヘンリー・チューダーを美化したんだろう,という点である.ヘンリー・チューダーは,チューダーという姓が示す通り,ランカスター家とは女系でつながっているだけであり,その先祖は王位継承権を否定されていたらしい.だから王位を得る正統性はかなり弱い.リチャード三世が殺したことになっているエドワード四世の王子は,もし生きていれば王位継承権でヘンリー・チューダーより強いから,殺したのは実はヘンリー側ではないか,という説もあるのである.そのようなヘンリーが王位を得ることを正当化するために,リチャード三世を思い切り悪く書いたんじゃないの,という考えである.
 だが史実がどうかは,ここでの話題ではない.

 この『リチャード三世』のDVDを観ながら,この作品は『マクベス』の出来損ないではないか,と私は思った.
 まず,『リチャード三世』の原題は The Tragedy of Richard the Third であり,『リチャード三世の悲劇』と訳するのが正しい.この作品を,シェイクスピアは悲劇と位置づけていたのだろう.
 中身的にも『マクベス』を連想させる箇所がいくつか出て来る.
 『ヘンリー六世 第二部』で,ヘンリー六世の摂政のグロスター公が,愚かな妻から,なぜ自分で王を目指さないだと言われる箇所がある.この作品ではグロスター公は立派な人と描かれているので(実際はそうでもない),グロスター公はそのような話は撥ねつける.その場面の後でその妻は,魔術で占いをさせるのである.ヘンリー六世,サフォード公,サマセット公というランカスター系の大物の運命を占わせる.この魔術まがいのことをしたことがばれて,妻は島流しになってしまう.が,その占いの結果はその3人の非業の死を予言していたのである.
 この作品では魔女がリチャードにささやくことはない.しかしヘンリー六世や妃のマーガレットはリチャードにいろんな予言をする.また,最後のボズワースの戦いを前にして,これまでリチャードが殺してきた人たちの霊が次々と現れてリチャードを破滅へと誘う.霊ではなく夢の情景かも知れない.
 こうした点は,『マクベス』のパタンだな,と思わせる.
 あくまで劇の中であるが,マクベスとリチャード三世は似ているところがある.どちらも王位を簒奪し,そのために多くの人を殺めている.
 違いもある.マクベスは魔女の予言やマクベス夫人の言葉に促されて王殺しをし,その結果,好むと好まざるとにかかわらずさらなる悪事へと引き込まれてゆく.そこが悲劇なのだろう.
 しかしリチャードは,自らの意思で悪事を進める.誰かに促された訳ではない.結果は悪かろうが,自ら選んでやりたいことをやった,その意味で清々しい人生ではないか? だから悲劇性はないのではないか? どこが悲劇なんだ? 
 この4部作は,『マクベス』を書くための素材は蔵しているように思う.しかし史劇という枠が制約になる.チューダー朝をヨイショするという制約もある.自由に悲劇を構成するためには舞台を昔のスコットランドに移す必要があったのだろう.
 シェイクスピアが悲劇として『マクベス』を書くのは『リチャード三世』の13年後のことである.

 DVDの『リチャード三世』の最後では,死屍累々の景色が映し出される.その中でヘンリー六世の妃だったマーガレットがリチャードの死体を抱きながら声を出して笑っている.その場面で全巻が終わる.やはりマーガレットが魔女の役割だったんだな,と思わせる.原作の通りなのか,演出なのか? いずれにせよ印象的な場面が多いDVDだと感じた.

by larghetto7 | 2018-04-23 22:27 | 日記風 | Comments(0)