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2019/02/12 火曜 『日本国紀』を読んでみる
1月の末にamazonで百田尚樹の『日本国紀』と高橋洋一の『「文系バカ」が,日本をダメにする』を注文した.夕方にネットで注文して次の日の午前中に届いた.台所に置いて合間に読んでいた. その『日本国紀』であるが,なるほど,売れるだけあってよく書けていると思う.歴史ものということだと,私が学生の頃は司馬遼太郎がよく読まれた(今も読まれている).司馬遼太郎の文章は自分の中に感動がこみ上げるのを感じながら書いているようなところがあり,しばしば長いセンテンスがあり,やや持って回った言い方をするところがある.その当時の様式だったのだろう.会津藩が幕藩体制の最高傑作だとか,西南の役の薩摩軍が当時世界最強の軍団だったとか,気持ちは分かるが何を根拠に言っているか分からないところもあった.けれど,そこが作家自身の感動を読者に伝えるようなところがある.対して百田尚樹の『日本国紀』はクールである.センテンスが明解であり,センテンスの長さも程よく制御されている.読みやすいテンポの文章である.ある意味『理科系の作文技術』的な所があるのが今日的なのだろう. 『日本国紀』の特徴と私が思ったのは次の点である. 第1に,おおまかな日本政治史である.歴史の流れの概略を伝えることに主眼があり,細かい点は省略している.大河ドラマ常連である新選組や戦国武将にはほとんど触れていない.大きな流れからは重要でないからだろう.鎌倉時代など,北条政権内部での権力闘争などは面白いと思うのだが,鎌倉時代の最初と最後,それにいわゆる元寇しか出てこない. 第2に,江戸時代以降に多くの頁を割いている.全体が505頁であるが,163頁から江戸時代に入る.「第7章 幕末~明治維新」が終わるのは280頁である.だから明治以降が4割強を占める.江戸時代に頁を使っていることは,日本の近代を語る上で江戸時代が重要だったからだろう.R.P.ドーアの『江戸時代の教育』が流行った頃に学生だった私にはよく理解できる. 第3の特徴はこの本が歴史上の人物をうまく取り上げていることである.幕末の小栗忠順が優れてた人であることは私も知っていた.が,水野忠徳や,平岡公威(三島由紀夫)の名前の由来だったという古市公威などは,私は知らなかった.司馬遼太郎の小説でも描かれる宇和島の嘉蔵も出て来る.「こんな立派な人がいましたよ」というのがメッセージであるが,反面,節操のない人も登場する.これら人物の記述が歴史の流れを親しみやすいものにしている. 第4の特徴は近現代史の箇所で中国や南北朝鮮からのプロパガンダに対応した記載が多いことである.その点は日本の歴史をすっきり書くという点からすれば過剰に思える.しかし記録による記載であり,中身はその通りと思う.その過剰さは了とすべきだろう. 特に上記の第4の特徴のためと思うが,左翼陣営は例によってこの本を批判攻撃していると聞く.それら批判について東大生のようなYouTuberがまとめて解説していた動画を目にする機会があった.よく調べたものである.たいした問題はない,が結論だった.まあ,その通りだろう. 本の中では書いていないと思うが,たぶん著者には,学校で教える日本の歴史がこのようであるべきだという主張があるように感じる(著者は「受験生は読むな」といっているようだが).今から10数年前,私は娘の歴史の教科書を偶然に見て驚いたことがある.日本暗黒史のようだった.資料集は土一揆・農民一揆の話ばかりで,マニアックに過ぎる.すんなりと日本の歴史を明るく述べることは,特に学校教育では配慮すべきことと思う.
by larghetto7
| 2019-02-12 22:43
| 日記風
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