2018/10/08 月曜 LGBT杉田論文
 「LGBT杉田論文」が世間でよく取り上げられる.その論文がどんな内容かと興味を覚える.が,本文を見るのが不可能ではないが困難であり,見ないままだった.先日,ネットを見ていたら本文を手打ちで入力して表示たらしいサイトが2つあった.手打ちであるからミスもあるかも知れないが,2サイト間で差はなく,大きなミスはないだろう,と考えて,その本文を読んでみた.
 予め私の結論を述べれば,次の2点である.
1.この「論文」は文の構造ができていない.その点が批判を招く一因になっている.
2.著者の立場に立てば,この論文の本来の結論は次の点になるべきだろう:普通の結婚を支持する主流文化の維持が社会の存続のためには必要である.メディアはその点をもっと認識してよい.

1.文章の構造ができていない

 読んで気づいたことは,内容以前に,文の構造ができていないことである.当然,「論文」とはいえない.念のため,この「論文」の各段落に私が作ったトピックセンテンスを当てて全体を表せば,次のごとくである.

1 LGBTの新聞記事が多い.
2 朝日新聞の影響が大きい.
3 報道の背後にあるのはLGBTの人の生きづらさを解消しようとすること.
4 しかし差別は小さい.
5 日本にはキリスト教社会のような同性愛迫害の歴史がない.
6 日本のマスメディアは欧米の論調を受け入れた結果である.
7 当事者は親の理解が得にくいことを悩んでいる.
8 親の理解が得られれば生きやすくなる.制度の問題ではない.
9 制度,行政を動かすことは税金を使うことを意味する.
10 子育て支援は政策的に税金を使う名分があるが,LGBT支援には子育て支援のような政策的な名分がない.
[小見出し LGBとTを一緒にするな]
11 LGBTのうちTは性同一性障害によるので,支援の考慮対象になる.
12 LGBは嗜好の問題である.LGBの持ち上げは不幸な人を増やすことになりかねない.
13 (三重県の調査で)性的志向が曖昧な回答者が多いのはLGB持ち上げの結果を表すだろう.
14 学校制服のLGBT対応.トイレ使用では混乱しかねない.
15 オバマ政権によるTのトイレ・更衣室の使用措置は米国で混乱をもたらした.
16 その混乱は今も続いている.
17 LGBTにQ,I,Pなどが加わると訳が分からなくなる.
18 性別の種類が増えて冗談のようになっている国もある.
19 多様性を受け入れると結婚制度の崩壊に歯止めがかからない.
20 LGBT報道には抑制が働いてよい.
21 「常識」や「普通であること」を見失うのは問題だ.

 このままでは「論文」全体が意味をなさないと私は思う.
 第1に文章が構造化されていない.論をなすというためには結論を支持する根拠が分かるように書かないといけない.しかしこの「論文」では「結論-根拠」の構造が分かりにくい.
 例えば,批判的によく取り上げられるのは段落10である.LGBTは生産しない(子供を産まない)から税金を使う対象にならない,と受け取られた箇所である.
 この箇所は(中身の是非は別にして)次のような理屈で成り立つはずと思う.

税金による公的支援は次の考えにしたがう.
(1)困っている人は公的支援の対象になる.
(2)政策目標(少子化対策など)に合う場合は支援に上積みがあり得る.
LGBTについては,
(1')L以外はさほど困っていない.(段落4-8,11)
(2')公的支援が政策目標に合うとは考えにくい.(段落12)
したがって,L以外は,大がかりな公的支援をすることは考えにくい.(段落12)

 上記のような「結論-根拠」の構造が分かるように書けば意味が通じる.しかしこの本文(段落7-11)は文章が構造化されていないのである.(2)だけで「支援の対象にならない」と結論づけるように受け取られる点が批判を呼んだ面があると思う.
 第2に,この「論文」は結論が不明確である.上で例示した「L以外は,大がかりな公的支援をすることは考えにくい.」は結論らしい部分である.がこの部分が12段落以降とどのようにかかわるのかは,よく分からない.
 結論が分かりにくい理由の1つは,この「論文」が批判のセンテンスばかりを連ねている点である.批判するには「望ましい何か」があるはずである.その積極的な「何か」を結論として示さないと批判の意味も理解しにくい.批判ばかりの野党が意味不明になるのと同じ構造がこの「論文」で起きている.
 今述べた第1,第2の問題によって,この「論文」はまとまりのない「LGBT批判」のセンテンスを並べた文書という印象になる.この「論文」を擁護する人の中には「全体を読めば分かる」という人もいる.が,全体を読んでも今のままでは全体が分からない.だから,この「論文」を批評する人は,結局,部分を取り上げて論評する以外になくなるのである.「LGBT批判」センテンスが並ぶ結果,「LGBTヘイト」の「論文」と受け取られるのは仕方ない面がある.
 善意に解すれば,この「論文」は起承転結のスタイルで書こうとしたのかも知れない.しかし起承転結は漢詩の文学的形式であり,論理的な文書の形式ではない.起承転結形式は「結論-根拠」を示すことに向いていない.

2.この「論文」の本来の結論

 「LGBT杉田論文」の結論(主張)は本来何なのか,を考えてみた.可能性はいろいろあり得る.その可能性を逐一あげてゆくと冗長な話になるので,もっともありそうな推論をしてみたい.この文章は起承転結で構成されたとすれば,最後の段落(21)が結論である可能性が高い.仮にそうだとして話を進めよう.
 段落21の主張をよりポジティヴに(私の言葉で)表現すれば,「普通の結婚を支持する主流(Mainstream)文化の維持は社会の存続にとって必要である」になるだろう.論のアウトラインを示せば次のようなものになると思う.

結論:普通の結婚を支持する主流(Mainstream)文化の維持は社会の存続にとって必要である.
根拠:社会の維持は次世代を「生産」し育てることにかかっている.その結果に導く行動様式が主流文化として存在する.
結論の含意
・多文化共生の社会ではLGBTの文化は下位文化として主流文化と共存すべきであるが,主流文化が衰退したら社会は消滅に向かう.LBGT文化(の社会)の存続は子を産む主流文化(の社会)に依存している.主流文化が消滅したら元も子もない.
・メディアも次世代を「生産」し育てる価値の重要性を認識すべきである.

 元の論文にある論点,例えば「L以外は,大がかりな公的支援をすることは考えにくい.」などは,入れるとすれば,上記のアウトラインの中に関連する事項として入れ込むのであろう.


 「LGBT杉田論文」を文章の面だけで見てきた.内容面でいうと,基本的な結論を維持するとしても,何点かリサーチを経ないと主張できない箇所も目に付く.例えば,(朝日などの)新聞がLGBTを称賛していることを前提とした記載になっているが,本当にそうかどうかは新聞記事の内容分析を経ないと何ともいえない.また,どうしてもチャチを入れたくなるような箇所も少なくない.例えば制服がLBGT配慮というけれど(確かにその学校ではそのように説明してはいるが),その実態は女生徒にもスラックスを認めることのように思える.女生徒のスラックスは結構なことであり,何も問題ないように思える.

by larghetto7 | 2018-10-08 22:51 | 日記風 | Comments(0)
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