2018/05/19 土曜 Going My Way を観る
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 BBCの『タイタス・アンドロニカス』を観てだいぶ気分が落ち込んだ.中和しようという訳でもないが,同時に『我が道を往く(Going My Way)』という映画のDVDも借りてきたので,その『我が道』を観てみた.
 ビング・クロスビー主演で1944年の作品である.アカデミー賞を多数受賞したので,たぶん歴史的な名画という位置づけだろう.昔だと,淀川長治が出てきて「いいですねぇ」というような映画であろう,と受け止めた.私は観たことはない.

 DVDのケースには,老牧師と赴任してきた若い牧師の物語であると書いてある.が,観てみると牧師ではなく神父なのである.ケースの記載は基本的なところが間違っている.
 だがこの間違いは仕方ないかな,という気もする.アメリカで聖職者といえば,そりゃ,牧師が基本だろう,と人は自動的に判断すると思えるからである.が,実はカトリックで神父であった.その点は,この映画の重要なポイントであったろう.
 以前の私の知識では,米国の宗教人口をみると,カトリックは最大宗派である.プロテスタントは細かく分かれていて,合計すると多数派であるが個々には小さい.以前,あるアメリカ人に,なのになんでカトリックがマイノリティなのさ,と質問したことがある.プロテスタントは,違ってはいるけれど,そんなに違わない,ということだった.
 単にカトリックというだけではない.観ながら気づいたことは,この映画は基本的にアイルランド系(Irish)の世界を描いているのではないか,という点である.主人公はオマリー神父であるが,オマリーというFamily NameはIrishに多いように思う.老神父の方は,90歳の母親がアイルランドにいるという設定だから,若い頃にアイルランドから米国に渡った,ということだろう.善人の警官の名前がマッカーシーで,教会にしばらく来ていないという設定なので,たぶん,やはりアイリッシュのカトリックだろう.
 念のため,ビング・クロスビーの経歴を調べてみた.父親はイギリス系であるが,母親がアイルランド系らしい.生まれたのは西海岸ワシントン州のタコマという.おいおい,タコマかよ,と思った.タコマはちらと行ったことがある.シアトルから州都のオリンピアに行く間にある港町であり,日系人も多かった.で,中退したけれど大学は,ワシントン州の東端のスポケーンにあるゴンザガ大学(Gonzaga U.)という,イエスズ会系の大学である.後にこの大学に寄付もしているという.だから,ビング・クロスビー自身が,アイリッシュが入っていて,カトリックなのだろう.
 アイリッシュの移民は,伝統的に,母国が飢饉になって食えずに米国に来ることが多かった.白人ではあるが,長く偏見とステレオタイプの対象であり,差別もされたのである.老神父は,母親が90歳というから,たぶん70歳.聖ドミニコ教会を設立し,45年間その教会で頑張ったという設定である.すると最初の頃は25歳くらい.この映画が1944年の作とすると,20世紀への変わり目の辺り,つまり米国への移民が一番多かった時期に,たぶん多くのアイリッシュとともにアメリカにやってきて,ニューヨークのアイリッシュが多い,基本的に貧しい地区で頑張ってきた,ということなんだろう.
 この映画は,そういう世界の人情劇である.それほど悲劇的な,あるいは派手な展開はない.落語の人情話とか,『こち亀』に時折出ていた人情話.そういう話であると思えばよいように思う.実際,最後の場面では涙を誘われた.
 もう一つ感じたのは,私にはカッコ良いとは思えなかったビング・クロスビーに,ヘンリー・フォンダとか,グレゴリー・ペックのようなダンディズムがあることである.古き良き時代なのだ.
 まあ,面倒なことはいわず,こういうシンプルな映画もいいですよね.

by larghetto7 | 2018-05-19 14:59 | 日記風 | Comments(0)
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