2014/08/17 日曜 新たな成績評価方式
 大学の一斉休業期間はお盆で墓参りをしていた訳であるが、合間に前期の成績処理をすることになった。休業といいながら忙しい。
 長く大学教員をやっていると成績をつけることにも慣れている。しかし、考えてみると次年度から、新たな成績評価をすることになっている。この点ではかなりの不安を覚える。問題は、成績評価方式を変えるなら同時であり、旧方式との共存には無理があることである。

 GPAが4.0スケールになることに合わせて、個々の授業の成績も5段階(0~4)になる。中間段階(例えば 2.5)でつけてもよいことになっているが、その点は本質的ではない。本質的なのは、今までの加点・減点方式で数字を出していた方式ではなく、文字通りのgradingに移行する(建前になっている)ことである。つまり、加点・減点方式の成績の出し方は、額面通り受け取れば、今後は通じなくなることである。
 しかし、この前の全学の会議での話では、同じ授業の出席者であっても、新方式を適用するのは新入生の学年からであり、それ以前に入学した学生については旧方式(100点満点)で成績をつける、という。会議の場で私は「それは無理でしょう」と言いかけたが、言っても誰も理解しないのはわかっているので、言うのをやめた。
 ウチの学部の場合はグローバル事業の関係で、昨年度のうちに、新たな成績評価に対応するようなRubric案を全学の要請に応じて作成した。実際に作ってみてわかることであるが、新方式の成績の出し方は、例えていえば英語検定のIELTSの結果の出し方に似ている。評価要素ごとに観点を決めて、その観点について対象者を5段階のgradingする。ウチの学部のRubricでは観点に重みづけをすることになるので、総合評価スコアは、一般には整数にはならない。が、そこは技術的な問題で、適切に整数化、ないし0.5刻みに変換すればよいだけである。問題は、こうした方式と従来の加点・減点方式が、システムが違うので、両立できないことである。適用する統計手法によって実験計画は変わるように、評価方式によっても授業の方法は異なる、同じ授業でありながら新入生にはgradingで、以前からの学生には旧来方式で成績をつけられる訳がない。無理に成績をつけたとしても、方法間での公平は原理的に保証できない。評価方法は、全員に同様に適用する以外にないのである。
 GPAを4.0スケールにすることを全学側は気軽に決めた。が、その成績をどのようにつけるかを全く考えていなかったとしか思えない。
 想定している通りに同じ授業で別方法で成績をつけることが求められてどうなるかは、目に見えている。教員は従来通り、まず100点満点の成績を出すだろう。その100点を4ないし5区分して、4.0スケールのGPをつけることになるだろう。しかし、本来、4.0スケールで成績を付けるなら、その各段階がどんな状態に対応するか、Rubricによって表示しないといけないことである。
 従来の成績評価方式と新たなgradingの方式の間には「哲学的な違い」も感じる。従来の成績評価方式は、学生の成績を公平に(悪く言えば他人事のように)眺めて評価する、という考えである。gradingでもそこは同じように見えるが、ニュアンスとしては、教員は学生を最上位のランクに引き上げることが求められている。実際、米国著名大学でも、成績の最頻値は多くの場合、最高位の4であり、だから平均GPAは平気で3.0を超えている。絶対評価であるから、それも「あり」なのである。たぶん、GPの低いクラスの教員は「怠慢」と見られるようになって行くだろう。結果として、授業をすることが疲れる仕事になって行くことは覚悟してよいように思う。
by larghetto7 | 2014-08-17 23:45 | 日記風 | Comments(0)
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